【NPOインタビュー】特定非営利活動法人 ADRA Japan (アドラ・ジャパン)

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特定非営利活動法人ADRA Japan理事・事業部長の橋本 笙子さんにお話しを伺いました。(2016年8月23日)

<プロフィール>
1988 年、マレーシアでの井戸掘りのプロジェクトにボランティアで参加したことをきっかけに、ADRA Japanへ継続的に関わるようになる。1996 年からはフルタイムのスタッフとして広報を担当、さらに1999 年からはADRA Japanの運営・事業全般にまで担当範囲を広げる。Marie Claire2009年3月号では「プラネット・ウーマン100」にも選出される。

■ADRA Japanの設立の経緯について教えてください。
米国メリーランド州シルバースプリングスに世界本部をもつADRA(ADRA International*)の活動の原点は、第1次世界大戦が終わったヨーロッパの国々における支援活動です。第2次世界大戦後は、日本でも病院や学校の再建など、10億円規模の支援が行われました。ADRA Japanは、復興が順調に進んだ1985年、ADRA本部から当時活動していた日本人メンバーに「支援を受ける側から与える側にならないか」との提案があり、同年3月に設立されました。

設立当初は、募金を集めて海外のADRA支部に送金するだけの活動が続きました。ですが、1995年の阪神大震災を契機としてNPOやボランティアの必要性が認識されるようになり、多くの方に知ってもらえるようになりました。その結果、資金が集まるようになったことでモンゴル、カンボジア等の海外に、寄付だけではなく人も派遣するようになります。そして、1999年のコソボ紛争の際、多くの団体等が活動途中で撤退する中でもADRA Japanを含めたいくつかの日本のNGOが現地に入って支援活動を行ったことが、外務省始め日本政府から高く評価されました。このことで、1999年はNGO元年と呼ばれるようになり、現在のような活動に繋がっています。

*ADRA Internationalについて・・・
ADRA Internationalの下には10の地域管轄支部が置かれ、北米、南米、南太平洋、アジア 、ヨーロッパ、アフリカ等、約120カ国に支部があります。これらの支部を拠点として援助活動をおこなっています。

■現在はどのようなところで、どのような支援活動をしていますか。
ADRA Internationalのネットワークを通じて各国と連携をとり、2016年4月現在の計画では、以下の地域で活動を予定しています。最近では、特に紛争地域(シリア近隣国、イエメン、アフガニスタン等)の支援が活動の中でも多くなっています。
1)開発支援:ネパール、ミャンマー、ジンバブエ、ケニア、ペルー、パラグアイ
2)緊急および復興支援:アフガニスタン、南スーダン近隣国、シリア近隣国、ネパール、イエメン、モンゴル、日本

現地では、保健衛生や教育の活動を多く行っています。保健衛生では手を洗うことの重要性を教えることが多いのですが、現地では手を洗う水自体が不足することもあり、基本的な生活環境を整えるのも時には難しい状況があります。また、教育支援では、校舎の建設などを通して環境を整備するだけでなく、教員の研修や学校運営を支えるコミュニティのサポートをしています。

■企業と協働した事例について教えてください。
協働の分かりやすい事例としては、デジトゲン(レントゲン撮影をデジタルカメラのようにフィルムなしで行えるようにした機器)を開発したあるメーカーの依頼を受けて行ったリサーチプロジェクトがあります。本プロジェクトでは、デジトゲンをネパールの活動地域に送り、現地の病院がモニターとなって、実際の使用結果をレポートする取り組みを行いました。この取り組みによって、企業は想定顧客からのフィードバックをもらえますし、ADRA Japanとしても取り組みを通じて現地のニーズをよく知る機会になりました。
実際にデジトゲンを使用してみると、病院でも24時間電気が通じないためにトラブルが起きたり、病院内ではレントゲンを見ることが出来ても地元のお医者さんに見せるために持ち帰ることが出来ないので困ったり、という問題が見えてきます。このようなプロジェクトで得た情報は、今後現地で活動を行う際に役立ちます。

また、直接ビジネスには繋がらないもののユニークな事例として、ある流通系の企業から「店頭募金で集めた寄付でミャンマーに学校を建設してほしい」という依頼を受けた事例があります。この企業では、学校完成後にお客様が現地を訪問できるツアーを企画していて、顧客のエンゲージメントを高める良い取り組みだと思いました。また、その企業はその後ミャンマーにお店も出店していて、地域とのエンゲージメントを高めるという点でも効果的な取り組みだと思います。

■今後はどのような形で企業と組みたいですか?
現地の必要に応じた支援が出来る企業と協働したいと思います。また、寄付をする・されるだけの一方通行ではなく、インタラクティブに対話しながら進めていけるとありがたいです。あるアパレルメーカーとのやりとりでは、最初は寄付していただくのみでした。しかし、その後対話をしていく中で、被災地域の若者のインターンシップ受け入れや、学生がデザインしたTシャツの発売を検討いただくなど、当初予想していなかった取り組みが始まったことがありました。企業と継続的に対話を重ねることで、もっと出来ることが増えるはずだと考えています。

特定非営利活動法人ADRA Japan (アドラ・ジャパン)HP:http://www.adrajpn.org/index.html

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