グローバル社会課題解決と企業の役割
環境、生態系、貧困、人権などといったグローバル社会課題に対して、今までにも増して企業の社会的責任が問われる時代となりました。これらの問題は、企業が関与することにより解決に大きく貢献できることであり、同時に、これらの問題が解決しないことには、企業活動の持続性が危くなっています。
さらに、社会課題解決に取り組むことで、事業の成功のヒントやきっかけを得ることができます。問題があるところに、ニーズがあり、それがビジネスの機会になりうるのです。2011年にマイケル・ポーター教授がCSV (Creating Shared Value=共有価値の創出)という概念を提唱しました。企業の経済的価値創造と社会的価値創造は矛盾したりかけ離れたりするものではなく、社会的価値を最大化するからこそ、経済的価値も最大化できるという考え方です。「CSRからCSVへ」という潮流が今、確実に起きています。
Shared Value、すなわち「価値を共有する」以前に、私たちはもう1つの大事なShared Valueがあると考えています。それは、「共に感じる価値観」(共感)です。21世紀のグローバル社会においては、価値観の共有という土台をしっかりと構築することが重要で、それによってこそ創造の持続性が可能になり、長い時間軸を考慮した最大化につながるといえるのではないでしょうか。どれほど優秀な人材が集まったとしても、土台をしっかりと共有することができなければ、ボタンの掛け違いが修復できず、意図した結果を生み出すことはできません。
多様な人々が共有する土台を築き、また持続させるためには「対話(ダイアログ)」が不可欠です。一方的に話を聞く姿勢では耳から入った情報が素通りして思考停止している場合が少なくありません。相手の話を踏まえて自分の意見を整理しながら発する「対話」でこそ、今まで自分が気付いていなかった新たな視点を発見し、また無関係と思っていた点と点がつながって新たな線を引くようなひらめきが生まれるのです。
自分の企業や国のことだけをコツコツとやっていれば報われるという時代は終わりました。これからの時代、日本がグローバル社会の一員として責務を果たし、その競争力を持続させるには、グローバル社会とシェアードバリューを基に、グローバル社会の対話の場に当事者として参加することが重要です。
そのためにはまずそのための人材が必要です。そして、語学や研修プログラム等に留まることなく、グローバルな対話の場に実際に参加し、グローバル社会を肌で感じるような経験を経てこそ、真のグローバル人材が育ち、グローバル社会への積極的な貢献が可能になるのです。社会の様々な分野とレベルにおいて、グローバル人材育成のための「長期投資」が急務となっています。ミレニアム世代の人々の一部は、こうしたことにもう動き始めているようです。企業も早くアクションを起こし、彼らが「共に感じ、共に作る」ことに取り組んでいくべきではないでしょうか。
グローバル・エンゲージメント・イニシアチブの発足
上述の思いを共有した渋澤健(シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役)と黒田由貴子(株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング ファウンダー)が、2015年からグローバル・エンゲージメント・イニシアチブ(GEI)という活動を始動させました。
GEIでは、企業経営者から若手ビジネスパーソンまでを対象に、グローバル社会課題について幅広い分野や国籍の方々が対話する場を設けています。また、海外に出向いて実際の現場を感じながら対話を重ねるという企画も用意しています。企業からのリクエストに応じたセミナー、対話会、現地体験プログラムなどにも応じています。