キリンホールディングス株式会社

日本で初めてのCSVという名の組織を立ち上げ
キリングループは2012年10月、CSRを一歩進めてCSVの考え方に立脚した「キリン・グループ・ビジョン2021」(KV2021)を発表し、同時にCSVを実践していくための組織として「CSV本部」を新たに立ち上げた。日本で初めてCSV(共有価値の創造)という名称を使った企業として、注目されている。

きっかけは、磯崎社長が、2010年から12年までキリンビールCSR担当役員などとして「世界経済フォーラム」(ダボス会議)に出席し、ネスレ、ユニリーバ、コカコーラ、独流通大手のメトロなど世界トップ企業の経営者がCSVに積極的に取り組んでいることを知り、触発されたことだという。(※1)

その意義について、橋本誠一・常務CSV本部長は、ある取材の中で次のように語っている。「企業の利益追求とCSR(企業の社会的責任)とを分けて行うのではなく、本業の活動の中にCSRの視点を入れていくことが求められます。業績が良ければいろいろなCSR活動をするが、悪くなったらちょっとお休みしますということであってはいけない。こうした考え方を発展させたものとして、CSVを位置づけています。」 (※2)

KV2021の中では、ステークホルダーを「お客様、従業員、コミュニティ、ビジネスパートナー、地球環境、株主・投資家」の6つに改めて整理しており、さらに事業活動にとって重要な社会課題は「環境」「人権・労働」「公正な事業慣行」「食の安全・安心」「人や社会のつながりの強化」「健康の増進」の6つに明確化されている。

また、いずれの分野においても、グローバル企業としての責任を果たすことの意識が高く、積極的に世界における情報収集や連携活動を行っている点が特徴的である。

ここでは地球環境の取組みについて、以下に詳細を紹介していく。

■ 地球環境:生物資源の持続可能な利用
地球環境については、「自然と人を見つめるものづくりで、『食と健康』の新たなよろこびを広げていきます」というグループ経営理念のもと、地球の豊かなめぐみと環境を、持続可能なかたちで将来につなぐことを目指している。

その具体的な取組みとして、2010年に「キリングループ生物多様性保全宣言」を策定し、調達する生物資源の生産地における生態系へのリスクを評価する等の取り組みを行い、2012年に「物資源調達ガイドライン」および日本国内における「行動計画」を定めた。

現在は「行動計画」に従い、農家とともに更に持続性を向上させるプロジェクトがスリランカで開始している。

■スリランカにおける紅茶生産者支援プロジェクト
スリランカは世界有数の紅茶葉輸出国であり、日本に輸入される紅茶葉の約60%(※3)もスリランカ産で、輸入された紅茶の25%はキリングループの人気ブランド「午後の紅茶」に使用されている。

キリングループはこの状況を受け、紅茶農園を特定し持続可能性や生態系保全への対応状況に関する評価を行った。その結果、スリランカの調達先農園の約4割が生物多様性に寄与する認証を取得していることが確認できた一方で、認証が取得できるのは比較的資金に余裕のある農園に限られているため、認証取得に意欲はあっても対応できない農園が多くある実態が把握された。

そこで、2013年はスリランカの紅茶農園の幾つかを対象に認証を取得する際のトレーニングに必要な資金を「レインフォレスト・アライアンス」に提供し、紅茶農園との持続可能な環境を実現することに取り組んでいる。

■参考URL
キリンホールディングスウェブサイト:
CSV本部
生物多様性の保全 http://www.kirinholdings.co.jp/csr/env/genetic.html#KHD01
キリングループのCSV http://www.kirinholdings.co.jp/csr/kirincsr/idea.html

出所:
※1 オルタナ 2013年7月
※2 日経ビジネス 2013年3月
※3 日本紅茶協会 2011年紅茶統計