社会的問題を解決することを目的とした活動を行う際の資金調達方法である。2010 年に英国で開発された手法で、民間の団体と政府が公共事業の成果目標の達成を契約し、団体が投資家・企業から資金調達を行い活動した結果、契約した社会的成果の目標が達成された場合、政府は支出の予算削減の度合いに応じて団体への成功報酬を支払い、投資家・企業にもそのリターンが支払われる仕組みになっている。
世界初の事例は、2010年に英国法務省とソーシャル・ファイナンスという機関が契約書への調印を行い、17の社会投資家から総額約500万ポンド(約8億2千万円)の投資資金を調達したものだ。以下が概要。
<世界初のSIBのしくみ>
■ 対象とする課題
・英国では短期受刑者の60%が釈放後1年以下に再犯を犯しており、これらの受刑者の多くは、釈放後に保護監察局による法定監査が受けられていないことが多い。
■ 問題を解決するための活動
・ソーシャル・ファイナンスはピーターバラ刑務所を対象に刑務所内および釈放後の受刑者への支援が可能な団体に資金提供を行い、受刑者の社会復帰を援助する取組みを開始。
■ 社会的成果の測定方法
・全英の短期受刑者グループの実績値と比較して、釈放後の再犯率が7.5%以上低下した場合、法務省は支出削減に応じた成功報酬を支払い、投資家もそのリターンを受け取る。
出資が償還されるまでの期間は8年の長期にわたり、目標が達成されなかったときは投資家への償還はなく、寄付となる。
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SIBの動きは米国に渡った後世界に広がっており、米国オバマ政権では1億ドルの予算化が準備されている他、韓国においてもSIB発行が準備されているが、日本ではまだ認知度が低いのが現状である。
SIBには、モデルが有効か検証するのに時間がかかる、効果測定をおこなうためのデータベース作成に手間がかかる、成果達成に関連する要素が複数ある時に影響している割合をどのように明らかにするか曖昧である、などの課題もまだあるが、社会を動かすための新たな手法の1つとして広まることが期待される。
(文責:千葉)