第10回GEI有志会レポート「平和をつくるを仕事にする ~支援の現場で学んだ人・チーム・世界の変え方~」

2018年7月9日の第10回GEI有志会では、ウガンダ、コンゴ民主共和国、ブルンジで、元子ども兵や紛争被害者の自立支援、カンボジア、ラオスで、地雷・不発弾被害者の自立支援を行っている認定NPO法人テラ・ルネッサンスの創設者・理事の鬼丸昌也さんにお話しいただきました。以下は、お話の要旨です。

「ない」ことは資源

設立17年目となるテラ・ルネッサンスは、現在、17名の日本人職員と70名の外国人職員を有し、年間予算は約3億円である。予算の内60%は自己財源であるが、この比率は日本のNGOとしては珍しい高さだと思う。

国際協力の仕事をしているのに、自分は英語が全くしゃべれない。また、新聞配達をしながら大学に通ったという苦学生で、お金もない。しかし、「ない」ことは資源である。「ない」から、英語ができる優秀な人に関わってもらえるし、資金力がある人が関わってくれる。「ない」ことで、多様な人々が集まってくれる。

 

戦争が終わっても地雷問題は何百年と続く

テラ・ルネッサンスを始めたきっかけは、2001年にカンボジアに行ったことである。地雷の除去が行われている横を子どもたちが歩いて通学している姿を見て、この問題を何とかしたいと思った。

カンボジアは近年、著しい成長を見せているものの、農村地域では貧困が固定化していたり、政権の独裁化が進んでいたりと、光と影の両面を持った国である。地方には、地雷源の中に家があったりする。その家の住民は引っ越したくとも引っ越すお金もなく、そこに住み続け、そこの田畑を耕すことで生きていくしかないのである。このように、カンボジアでは地雷源と共存することを余儀なくされている人々が数多く存在する。

インフラ整備が行われるときは、地雷除去団体が来て、地雷を除去する。日本製の地雷除去機は有名であるが、万能ではない。たとえば、重機では竹やぶには入っていけない。あるいは、地雷にも何百種類もあり、一つの機械ではとても対応しきれない。したがって、人間の手で除去していくのが最も確実と言われている。一説によると、カンボジアの地雷をすべて除去するには600年かかるという。カンボジアの戦争は、過去の話ではなく、現在の話であり、将来にも続く話でもある。戦争というのは、その最中の悲劇だけではなく、終わったあとも長らく影響を与えるものであることを認識しなければいけない。

 

誰しもの心の中にある「地雷」

カンボジアの内戦では、ポルポト政権が権力を手中に収めるべく、地位やスキルがある人々を抹殺しようとした。ものを作ることのできない障碍者も抹殺しようとした。キリングフィールドの跡地に掲げられている殺された人や子供たちの写真を一度は見に行ってほしい。

ポルポト政権は1979年まで続いたが、それは自分が生まれた年である。自分と同じ時代に、このようなことをする人間がいたということが信じられず、強いショックを受けた。これはカンボジア人が残虐だからという理由で起きたわけではなく、日本国内でも恐ろしい事件が色々と起きている。自分の隣の家で虐待が起きているとも限らない。でも多くの人は関わろうとしない。

誰しもの心の中に地雷があると思う。その地雷とは、「他の皆と一緒ではないといやだ」という気持ち。だから、「皆が戦争するなら自分もする」ということになる。そう思うと、自分が何をしようとも世の中は変わらないのではないかと、諦めかけていた。

しかし、諦めてはいけないことを教えてくれたのが、クリス・ムーンである。イギリスの軍人だった彼は、地雷撤去活動中に触雷し、右手と右足を失った。その後、マラソン走者となり、ロンドンシティ・マラソンから、阿蘇山の100キロマラソンという超過酷なレースまで世界各地で走り続けている。長野オリンピックの開会式では聖火最終ランナーを務めた。ちなみに、開催国出身ではない人が聖火最終ランナーになるというのは、他に例がないことである。

ムーンは、「自分が走る姿を見た人が一人でも地雷はいらないと思ってくれれば」という思いで走るのだという。それを聞いた私は、「世の中を変えられるかどうかわからない不確かな状況では、自分ができることから始めるべき」ということに気づかされた。自分はといえば、生徒会長をやっていた経験があり、人前で話すことならできる。地雷の問題を話し伝えることが、自分だからこそできることであり、自分の天職なのだと気づいた。

 

ウガンダの子ども兵が自分の母を傷つけたわけ

地雷の被害者と会っているうちに、子ども兵の問題を知るに至った。子ども兵を扱っているNGOを探してみたのだが、日本にはなかった。そこで、自分たちでやるしかないと、ウガンダを事業地に選び活動を始めた。ウガンダは旧イギリス領で英語が通じるのと、子ども兵問題が現在進行形であることが選んだ理由である。

ウガンダでは、イギリスによる分断統治で南部と北部に格差が生まれ、北部で内戦が起きて23年になる。その内戦では、3万6千人の子どもが誘拐され、兵士となった。自分が2004年にウガンダを訪れたときに出会った元子ども兵のうち、ある16歳の子を紹介したい。

彼は、12歳で「神の抵抗軍」という武装勢力に誘拐され、兵士となる訓練を受けた。そして「神の抵抗軍」は彼に自分の村を襲いに行かせた。彼が罪悪感で村には戻れなくなることが狙いで、子ども兵脱走防止のための軍の常とう手段である。彼が自分の村を襲いに行ったとき、軍から、自分の母親の腕を切り落とすように命じられた。「嫌だ」と言ったら、ボコボコに殴られた。そして、命令にそむくのなら彼も彼の母親も殺すと言われ、彼は命令に従った。腕が切り落ちるまで、何度も何度も鉈を振りかざした。

数年後、彼は足に銃撃を受け、使い物にならないと軍から捨てられた。村に戻ったとき、母親は「大変だったね、辛かったね」と声をかけてくれた。しかし、「でも母は自分のことをもう愛してくれないだろう」と彼は私に語った。

 

子ども兵が増える3つの理由

こうした子ども兵が増える背景には3つの理由があると考えている。1つ目は、子どもは素直なので兵器として使えるということ。2つ目は、武器が小型化しているということ。そして、3つ目が先進国の生活との関係にある。先進国の人々が使う製品の資源が、戦闘の根本原因であるからである。

テラ・ルネッサンスが、今、子ども兵対策で最も力を入れているのはコンゴ民主共和国である。豊富なレアメタルと未開発の油田を抱えるコンゴに、2000年初頭以来、多くの周辺国が兵を派遣するようになったのだが、その背後には先進国の権益争いがある。コンゴで採れるレアメタルは、私たちが使うパソコン、スマホ、携帯電話に入っている。そう思うと、スマホを使っている自分は、この問題に加担しているわけであり、そんな自分が支援活動を行うのは偽善ではないかと、やっていることの意味がわからなくなってきた。

悩んだ末、自分ができることは、まず勇気をもって自分が当事者であることを認めること、そして人々に自分が使っているものは誰がどう作ったのかに関心をもってもらうよう働きかけることだと考えた。

なので、皆さんにもお願いしたい。むやみやたらに製品を買い替えないこと、本当にそれを買う必要があるのかを問うこと、その製品を作るのに誰がどうか関わっているのかを考えてみることを。

 

一人の主婦が大企業を動かした

こうした自分の取組みは、微力ではあるが、無力ではない。あるとき、イギリスの若者たちが、ある新聞広告をうった。その1面広告には、ダイヤのネックレスを身につけた女性の写真があるのだが、そのネックレスからは血が滲みだしている。そして、「あなたは愛する人に、血塗られた紛争の原因となっているダイヤを買ってと言えますか?」と問いかけている。この広告を見た若者らは、宝石を買うときに、「これはどうやって採掘され、誰がどう加工したものか?」と聞くようになったという。やがて、ダイヤの原産地証明書の添付を義務付けるキンパリー・プロセスという制度にもつながっていたと言える。

また、自分が福島県で講演をしたときのことである。聴衆に、自分が使っている携帯電話は子ども兵を有するコンゴの武装勢力との取引によって作られたかもしれないことにショックを受けた女性がいた。しかし、携帯電話は生活に必要なので、捨てるわけにはいかない。そこで、彼女は携帯電話メーカー各社に次のような手紙を書いた。「自分は福島県の主婦で、2人の息子がいる。携帯電話に使われるレアメタルはコンゴでの戦争を引き起こし、子ども兵を生んでいると聞いた。そういうレアメタルを御社は使わないでほしい」

すると、1社を除いた全ての会社から回答が来たという。中でも、対応が丁寧だったのはシャープとパナソニック。パナソニックの担当者からの返事には、「恥ずかしながらそのような問題があることを初めて知った。わが社の創業理念に照らし合わせ、調査・検討したい」とあったそうである。

なお、現在、レアメタルで一番消費量が多いのが、コンゴで採れるコバルトであり、それは電気自動車のバッテリーに使われている。そのバッテリーの主要メーカーの1つがパナソニックだが、国際的なルール作りの先頭に関わるようになっている。

 

ウガンダの元子ども兵が日本に寄付をした

テラ・ルネッサンスは、ウガンダ、コンゴ、ブルンジといった国で子ども兵の社会復帰の支援活動をしている。具体的には、一人あたり3年かけて、職業訓練や心のケアをし、マイクロクレジットで起業や就職のサポートをしている。ウガンダではこれまで累計で204名の支援をした。彼らの平均月収は、支援前に128円だったのが、支援後は7008円になる。これは現地の公務員と同等レベルである。ウガンダでの活動資金には2800万円かかっているが、それによって5200万円の経済価値を生み出している。緊急支援と復興支援を掛け合わせた活動をできるのがテラ・ルネッサンスの強みである。

2011年3月11日、東日本大震災が起きたとき、自分は葛藤した。「被災地の支援がしたい。でも、アフリカを支援するお金を減らすことになってもいいのか?結局、国籍や距離で支援対象を選ぶのか?まわりの皆がやっているから自分もしたいのか?」と。

すると、ウガンダから電話がかかってきた。「私たちを助けてくれた優しい日本人があのような目にあっているなんて、心を痛めている」と現地の人がいう。そして、現地職員や自立を果たした元子ども兵たちがお金を出し合ったら5万円になったので、「それで毛布を買ってあげて」と言うのである。さらに、「あたなはどうするのか?自分の国でしょう?」とも問われた。そこで、テラ・ルネッサンスとして東北での被災者支援活動を始めることを決意した。

岩手県の大槌町で、おばあさんたちを対象に刺し子プロジェクトを始めた。おばあさんたちは当時、避難所で何もやることがなく、「やることないと思い出すのはあのことばかり」と言っていた。そこで、賃金を払って刺し子となってもらった。

今や、国連がSDGsを制定し、一つの目標のもとに、皆が結集することとなった。皆が、一人ひとりが何をできるかが問われている。特に、企業が変われば、ものすごく可能性があると思っている。

講演後の対談、渋澤氏(左)・鬼丸氏(右)

Q&Aで出た質問は次のとおり

  • 子ども兵は世界に何人くらいいるのか
  • 重たい問題に関わっている鬼丸さんはどうやって笑顔でいられるのか
  • 未来を見据える力はいつ身に着けたのか
  • 人間愛とは何か
  • 企業に支援を依頼したときの断られ方に変化は見られるか
  • 今、最もやりたいことは何か
  • 監視型NGOとして企業に警告したり、政策提言をしたり、という活動はしないのか
  • 日本では、NGO同士で協力して何かを作り上げることは少ないと思うが、どう考えるか
  • NGOが合併していく上での課題は何か
  • 株式会社、NPO、社団法人など組織の形態は様々だが、組織形態についてどう考えるか