【有識者インタビュー】石田 寛(経済人コー円卓会議日本委員会専務理事・事務局長)

遏ウ逕ー縺輔s関西学院大学専門職大学院教授、経済人コー円卓会議日本委員会専務理事・事務局長も務められている石田寛様にお話をお伺いしました。(2013年7月23日)

Q:石田先生は企業のCSRについて、どのようにお考えでしょうか。

A:CSRという言葉には実は若干の違和感を持っています。企業は企業である以上、利益をあげ続けることだけを考えればいいのです。ただ、利益をあげる方法は、社会全体に配慮した形で自己利益を生み続けるようなものであるべきです。

私は、C、S、RはCompany, Stakeholder, Relationshipだと言っています。ずっと会社の中にいると、社会の動きが見えてきません。様々なステークホルダーとの関係を通じて、外の視点を取り入れ、事業プロセスを構築しなければなりません。

CSRの動きは、点、線、面の3層で捉えられます。点は、社会貢献、コンプライアンス、環境問題などそれぞれがパッチワーク的に行われている状態、線は、企業とNGOとの連携などが起きているような状態、面は、企業活動が社会全体に及ぼす影響を考慮している状態です。面のCSRでは、企業として何をすべきか、どういう責任を負うかといったことを、バリューチェーンに関わる様々な人々と共に考えることが求められます。

実際に、面でCSRを捉える動きが盛んになりつつある欧州では、CSR部門を経験することは、経営者となる登竜門になってきているのです。

Q:最近のCSRの潮流はどういったものでしょうか。

A:「ビジネスと人権」ということが注目されています。ビジネスを行うときに人間は必ず介在するわけですが、そこで人権が侵されるリスクが常にあります。たとえば、工場が建つことによって、その地域住民がストレスを感じれば、それは人権に関わる問題です。多くの企業では、顕在化したリスクに対して対応するようなリスクマネジメントしか行われていませんが、潜在的リスクを先読みし、対処することが必要であり、それを「CSRリスクマネジメント」という概念で提唱しています。国連とも連携しながら、本テーマに関する国際会議を9月に日本で開催する予定で、今、いくつもの企業を巻き込みつつあります。

http://www.crt-japan.jp/files/documents/130905_UNGP.pdf

Q:社会に及ぼす負の影響を管理するCSRについてお話いただきましたが、いわゆる慈善事業のような活動については、どのようにお考えでしょうか。

A:寄付やボランティアなどを行うのは良いことだと思いますが、継続できないと意味がありません。したがって、ビジネスとどうリンクさせるかが大事です。また、社会貢献活動は、社員の人材育成だと割り切るとよいとも考えます。社外の空気に触れ、会社の代表として社会の様々な層の人と話をするよい機会です。そのような経験を通じて、感度を磨けば、何かに接したときの吸収力が全然違ってきます。

Q:石田先生はBOPビジネスについてもご専門でいらっしゃいますが、日本企業がBOPビジネスに取り組む意義をどのようにお考えでしょうか。

A:一般的にいって、日本企業は技術力がありますが、その技術がBOPには高過ぎであり、基盤となる規模も大き過ぎるので、なかなかBOPで成功することができていません。BOPビジネスでは、いかに、現地にあるもので代替するか、カスタマイズするか、シンプルにするか、が肝要です。BOPビジネスをやるというのは、大胆に、本質的に、シンプルに考えることを意味します。こうした考え方は、本来、仏教や禅など、日本のもつ価値観や思想に即したものであるのですが、日本企業は西洋に追いつけ追い越せでここ何十年間か来たので、そういった考え方を見失っているようです。

ただ、日本企業の中でも、水の浄化装置の日本ポリグル、造船事業のツネイシ、住友化学のように、うまくやっている企業もありますね。

Q:最後に、今度は、NPO側にメッセージをお願いします。

A:日本に、もっとパワフルなNPOを作っていかなければならないと思っています。特に、発信力と、企業やNPOを束ねていく力の2つが必要です。NPOがもっと強くなって、企業と渡り合う、さらには企業にパンチをきかせるぐらいにならなくてはいけないと思っています。