Collective Impact(コレクティブ・インパクト)

コレクティブ・インパクトとは、立場の異なる組織(行政、企業、NPO、財団、有志団体など)が、組織の壁を越えてお互いの強みを出し合い社会的課題の解決を目指すアプローチのこと。
2011年、John KaniaとMark KramaerがSSIR(Stanford Social Innovation Review)で発表した論文”Collective Impact”で定義された言葉であり、個別アプローチにするだけでは解決できなかった社会的課題を解決する新たな試みとして発表された。

論文においてコレクティブ・インパクトで成果を出すためには以下の5つ要素を満たすことが重要と規定している。
1.共通のアジェンダ:全ての参加者がビジョンを共有していること。
2.評価システムの共有:取り組み全体と主体個々の取り組みを評価するシステムを共有していること。
3.活動をお互いに補強しあう:各自強みを生かすことで、活動を補完し合い、連動出来ていること。
4.継続的なコミュニケーション:常に継続的にコミュニケーションを行われていること。
5.活動を支える組織:活動全体をサポートする専任のチームがあること。

コレクティブ・インパクトの代表的な事例としてはStriveTogetherがあり、団体は「若者の教育課題にインパクトを及ぼすには若者の人生の全ての段階(揺り籠から就職まで)に関連する団体が協力することは大事だ」という考え方のもと、アメリカ・シンシナティ・ノーザンケンタッキー地域の300以上の団体(市長の役人、学区の責任者、大学の学長、教育関連のNPOなど)がこれまでの垣根を越えて参加し、2006年に発足した。

活動では新規のプログラムを策定やさらなる資金調達をするのではなく、共通の目標・成果および53の成果指標について意識を一致させ、特に必要な取り組みに資源を集約し、進捗状況を記録するためのデータ分析・共有を隔週でミーティングをもつなど定期的に行われた。
そうした最初の4年間の継続的な取り組みの結果、3つの公立学地域の生徒の成績が改善し、成功指標53項目のうち34項目(高校卒業率、小学校4年生の算数とリーディングの成績、幼稚園の就学など)で改善傾向が見られるまでとなった。
現在、活動の経験・ノウハウ・ツールは一般に公開されており、国内だけでなく海外まで広がりを見せている。

日本国内でも企業とNGOなどのセクターを超えた協働においてコレクティブ・インパクトという言葉が使われる機会が増えてきている。

出所:Collective Impact | Stanford Social Innovation Review
出所:StriveTogether
(文責:千葉)